校長メッセージ

校長 樋口 聰

~“学び”を“カタチ”に~

東京工業高等専門学校のホームページをご覧いただき、ありがとうございます。

本校は、1965年(昭和40年)に開校し、半世紀を越える歴史の中で、機械、電気、電子、情報、物質などの工学各分野で活躍する創造的な技術者を育て、社会に送り出してきました。

高等専門学校は、中学校卒業後の5年一貫の高等教育機関、つまり、大学と同じ類型の機関です。その特徴は、早期からの専門的・実践的教育にあり、1年生から専門科目が始まり、複雑な実験にも取り組み、自ら研究し、「ものづくり」「ことづくり」に取り組みます。しかし、卒業まで一般科目もしっかり学びます。5年一貫で一般科目と専門科目が密に連動するからこそ、“学び”を“カタチ”にし続ける教育が可能になり、基礎基本の備わった創造的技術者を養成することができるのです。

中でも本校は、「社会実装」を大切にしています。企業や地域が抱えるリアルな課題を自ら発見し、高専で学んだ知識と技能を総動員しチームで試作・改良を重ね、実際に社会に投入して外部から本物の評価を得るプロジェクトを全学生が取り組みます。本校は、社会実装教育に関する全国高専の中核として、「社会実装教育フォーラム」という全国コンテストを主催し、さらに、最新の設備を備えた全国高専の教育研究等拠点(総合型)として、「社会実装教育研究センター」を設置し、社会実装に関する研究・教育を推進しています。

このような本校の教育に取り組む学生は社会から高い評価を得ており、このことは、就職希望者に対して約20倍という求人倍率の高さでも実証されています。現在、本校本科の卒業生の約半数が機械、自動車、IT、製薬など様々な企業に就職し、約半数は国公立大学等に編入学又は本校専攻科に進学しています。
また、本校の学生は、各種のコンテストにも積極的に参加し、目覚ましい活躍をみせています。高専ロボコン(ロボットコンテスト)では例年全国大会出場、高専プロコン(プログラミングコンテスト)全国大会では高専随一の優勝回数を誇っています。加えて、令和5年度には、全国高等専門学校英語プレゼンテーションコンテストで部門2位、NEC Security Skills Challenge for Students 2023で高専部門2位(全体3位)、Future Convenience Store Contest 2023で部門3位等の多くの活躍がありました。こうした各種コンテストについても積極的に支援してまいります。

これからの社会は、科学技術の急速な進展で、革新的な発想や技術が新たな価値や産業を次々に生み出し、中でも、デジタル技術の目覚ましい進化により、様々な“AI”(人工知能)が社会のいたるところで利用されるようになるでしょう。その一方で、今日の世界は、気候変動や自然災害、感染症蔓延のリスク、紛争の激化や社会秩序の揺らぎ、社会的、経済的格差の拡大などの複合的な課題に直面し、予測困難な時代を迎えているともいえます。” Deep Tech”という言葉がありますが、社会課題を解決する革新的な発想は身近なところにあり、こうした革新の主人公は“人間”です。” AI”ではありません。
“他人”や“AI”に与えられたものではなく、自分で目標を設定し、実現のために必要な知識・情報を組み立て、人の心に働きかけ、ともに行動する。そのために、本校の学生は、実験や研究、プロジェクト、コンテストなど様々な機会を通じて、~“学び”を“カタチ”に~を繰り返します。そして、この取り組みを通じて、~“学んだ”ことを“カタチ”に~から、~“カタチ”にするために自ら“学ぶ”~に、学びのスタイルも進化していきます。

本校は、我が国の未来を担う優れた技術者の育成を目指し、教職員一同、全力を挙げて学生の支援に努めてまいります。また地域とともにある高専であり続けたいと願っています。保護者の皆様、地域の皆様をはじめ、関係の皆様におかれては、今後とも東京高専へのご理解とご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。